
不登校経験者が「自分には無理」と思ったときの乗り越え方
目次
1. 「無理だ」と感じるのは“感情”であって“事実”ではない
「自分には無理だ」「どうせできない」と感じたことはありませんか?
それは決してあなたの“能力”の問題ではなく、心が抱えた“感情”の反応にすぎません。
◆ なぜ「無理」と思ってしまうのか?
人は不安や失敗の経験が積み重なると、「またうまくいかないのでは」と未来に対して過剰に慎重になります。とくに不登校を経験した人は、「授業についていけなかった」「みんなと同じようにできなかった」などの思いが強く、その記憶が「もう挑戦するのはやめよう」と自分を守るために働いてしまうのです。
でも、それは“あなたが無理な人間だ”という証拠ではありません。
たまたま「できなかった経験」が強く印象に残っているだけで、同じように「できたこと」や「がんばったこと」だって、本当はたくさんあったはずです。
◆ 他人との比較が「無理感」を強めてしまう
SNSや周囲の同級生を見て、「あの人はもう受験勉強してるのに」「学校にちゃんと通っているのに」と、自分と比べて落ち込んでしまうこともあるでしょう。
でも、他人のペースはあなたのペースではありません。比べるべきは“今のあなた”ではなく、“少し前のあなた”です。
◆ 「無理」な気持ちに向き合うワーク
📌 今日できるミニワーク
- 「無理」と思っていることを紙に書き出してみる
例:「英語の長文が読めない」「何を勉強すればいいかわからない」 - その理由や背景も書いてみる
例:「中学のときに苦手だった」「誰にも教えてもらってないから」 - “反証”となる経験を探す
例:「でも英単語は10個覚えられた」「ノートはちゃんと取っていた」
このように、“自分がなぜそう思っているのか”を客観的に見つめ直すだけでも、気持ちは整理されます。感情は曖昧で一時的なもの。
冷静に見直せば、「今すぐできない」ことと「これからもずっとできない」ことは違うと気づけるはずです。
2. 「できなかった」を分析して「どうすればできるか」に変える方法
「自分には無理」と思う背景には、「前にできなかった」という経験があることが多いです。
でも、その“できなかった理由”をしっかり分析すれば、次は“できるようにするための方法”が見えてきます。
「なぜ続かなかったのか」を振り返る
たとえば、中学の勉強がうまくいかなかった場合。
ただ「サボってしまった」と片づけるのではなく、以下のように要因を分解してみましょう。
よくある原因 | 具体例 | 改善方法 |
---|---|---|
環境が整っていなかった | 家が騒がしい/居場所がない | 図書館や自習室、個室型スペースを活用 |
勉強の仕方が分からなかった | 何から手をつけていいか迷った | プロのサポートを受けて計画を立てる |
勉強が苦手だと感じていた | 問題を解いても全然できなかった | もっと前の単元(中1レベルなど)から始める |
📌 ポイントは、「何が原因だったのか」「どうすればそれを防げるか」に目を向けること。
過去の失敗を材料に、次の行動を考える“設計図”をつくるイメージです。
勉強を始める「準備」を整える
勉強をいきなり始めるのではなく、「始める準備」を整えること自体が重要な行動です。
- 学習スペースの確保:机の上を片づける、専用スペースをつくる
- 教材を1つに絞る:あれこれ買わず、1冊をやり切る
- スケジュール表を作る:まずは「1週間だけ」など短期間で作成してみる
- サポート先の検討:勉強方法が分からない場合は、塾・家庭教師・支援団体などをリストアップ
📌 勉強する“前段階”が整えば、「やるべきこと」が明確になり、気持ちもぐっと楽になります。
「再スタート」は、改善された環境とやり方で行う
過去にうまくいかなかった方法を繰り返す必要はありません。
環境を変え、方法を変えれば、「再スタート」は全く違う結果につながります。
たとえば:
- スマホの通知が来ない時間帯だけに勉強時間を限定
- 自分のペースで進められる教材を使う(例:見開き1ページ完結型)
- 指導者と定期的に面談し、自分に合ったやり方を調整していく
これらは、過去と“同じ道を歩まない”ための具体策です。
3. 不登校経験者の声──「無理」だった自分を変えたきっかけ
「自分には無理だと思っていたけれど、変われた」
そんな先輩たちの実体験は、今まさに悩んでいるあなたにとって大きなヒントになります。ここでは、実際に不登校を経験し、その後に前進できた高校生たちの声をご紹介します。
ケース1:中学の不登校から通信制高校へ。志望校合格までの道のり
「中学では3年間ほとんど登校できず、勉強も自信がありませんでした。でも、通信制高校に入ってから“やり直せるかも”と思えて。最初は英単語10個から始めて、3年の夏には模試で偏差値60を超えるまでに。通っていた塾の先生が、私のペースに合わせて計画してくれたのが大きかったです。」
— 19歳・大学1年生(公立大進学)
📌 ポイント:最初の一歩は「できること」から。サポートがあることで継続しやすくなる。
ケース2:「自分なんか無理」が口グセだった私の変化
「高校に入っても『どうせ無理』って思ってばかりでした。でも、週1回だけの勉強会に参加してみたら、少しずつできることが増えて。“あれ、案外できるかも”って感じる時間があったことで、『ちょっとだけやってみるか』と思えるようになりました。」
— 17歳・通信制高校2年
📌 ポイント:小さな成功体験が「できる自分」へのきっかけになる。
ケース3:支援先の存在が「心のよりどころ」に
「不登校のときは、誰にも頼れずに孤独を感じていました。でも、高校で紹介された進学塾の先生が『大丈夫、一緒にやってみよう』と言ってくれたことが忘れられません。今は週3で通って、英語と数学を中心に学んでいます。1人じゃないって感じられるのが、一番の安心材料でした。」
— 16歳・通信制高校1年
📌 ポイント:学習支援だけでなく、「安心できる関係性」が継続の鍵になる。
このように、多くの人が「無理」と思いながらも、環境の変化や他者の支えによって前向きに進む力を取り戻しています。
4.不登校を乗り越えて活躍する有名人たち 〜進学・その先へ〜
▶ 1. 若新雄純さん(慶應義塾大学 → 社会起業家・大学教員)
- 不登校経験: 中学から不登校、高校もほとんど通わず。
- 進学ルート: 高卒認定試験(旧・大検)→ 慶應義塾大学 総合政策学部
- 現在の活動: 大学特任准教授/コメンテーター/実験的プロジェクトの企画・運営
例:「鯖江市JK課」「ニート株式会社」など。
📌 ポイント: 不登校だったからこそ、「枠にとらわれない柔軟な発想」を武器にできた。進学を経て、むしろその経験を社会貢献に活かしている好例。
▶ 2. 坪田信貴さん(関西学院大学 → 教育者・『ビリギャル』著者)
- 不登校経験: 思春期に不登校気味となり、周囲との不和や孤独に悩む。
- 進学ルート: 関西学院大学 教育学部に進学。
- 現在の活動: 塾経営者/教育コンサルタント/著述家
『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』がベストセラーに。
📌 ポイント: 過去の挫折を糧にし、自分と同じように悩む子どもたちの力になることを選んだ。著書は多くの通信高校生にも勇気を与えている。
▶ 3. 米津玄師さん(徳島県内の高校 → 美術系大学 → 音楽家)
- 不登校経験: 小中学校時代に対人関係の悩みや発達特性による生きづらさから不登校に。
- 進学ルート: 高校卒業後、美術系の専門教育機関に進学(大阪の美術系大学※に一時通学)
※在学当時は「音楽活動との両立が困難」として退学 - 現在の活動: アーティスト/作詞作曲家/音楽プロデューサー
代表曲:『Lemon』『アイネクライネ』『馬と鹿』など。アートワークも自作。
📌 ポイント: 学校生活に馴染めなくても、好きな表現の道を見つけることで、自分の特性を最大限に活かした成功例。
不登校から広がる、あなたらしい未来のかたち
この3人に共通するのは、
- 一度つまずいたことを否定せず受け入れたこと
- 自分のペースで「学び直し」や「表現の場」を探したこと
- 周囲の“普通”ではなく、「自分の道」を見つけて進んだこと
です。
📌 進学の有無に関わらず、「自分に合った選択をすること」が、将来の自信や活躍に確実につながっていきます。なスタートでも、「自分のペースで挑戦を重ねていけば、未来は開ける」ということを、彼らの姿からぜひ感じてみてください。
5. 「好き」を入り口にする——得意から始める、新しい自分の見つけ方
不登校を経験したあと、「何から始めればいいかわからない」「勉強に戻るのが怖い」と感じるのは自然なことです。
そんなときこそ、「好きなこと」「得意なこと」から、自分のペースで前に進んでいく方法を考えてみましょう。
勉強が「目的」ではなく、「手段」になる
たとえば──
- ゲームが好き → プログラミングやゲーム制作に興味を持てるかも
- 絵を描くのが得意 → デザイン、Web、イラスト系のスキルにつながる
- 音楽や歌が好き → 音大だけでなく、音響、映像制作なども視野に
こうした“好き”をきっかけにすると、「この分野を学ぶには何が必要?」と自然と学びの方向が見えてきます。
「好き」は行動のエネルギーになる
勉強のきっかけが“受験”や“テスト”だと、気が重くなってしまうこともあります。
でも、「もっと詳しく知りたい」「もっと上手くなりたい」と思える分野なら、行動するエネルギーは自然と湧いてきます。
📌 例えば:
- プログラミング → 無料アプリ「Progate」「paizaラーニング」で入門
- イラスト → pixiv、X(旧Twitter)などで公開・交流も可能
- 動画編集 → スマホアプリで簡単に始めて、YouTube投稿もできる
「好き」は、自分を肯定できる最初のステップになるのです。
そこから「学びたい」に広がっていく
好きな分野に少しでも触れると、今度は「もっと知りたい」という気持ちが出てきます。
この時点で、学びは“義務”から“自発的な行動”に変わっています。
📌 「興味→学び→小さな成果」が回り始めると、
- 自信がつく
- 行動が増える
- 次のチャレンジにも前向きになれる
という好循環が生まれます。
「趣味」は受験や将来にもつながる
意外に思うかもしれませんが、好きなことは入試の「自己PR」や「志望理由書」にも活かせる強みになります。
📌 例:
- 絵を描いていた → 美術系・デザイン系・教育学部での活用
- SNSで発信していた → メディア系・情報学部の志望動機に
- ゲームにのめり込んだ経験 → 情報工学部や心理学部で使える視点に
自分の「好き」は、あなただけの財産
誰かと比べる必要はありません。
どんなに小さな「好き」でも、それはあなただけが持っている貴重なきっかけです。
「まずはこれを伸ばしてみよう」
そんな想いを大事にすることで、「自分には無理」と思っていた気持ちを少しずつ乗り越えることができます。
6. 「無理」だと思った場所から、新しい可能性は始まる
不登校の経験があると、「勉強が遅れている」「みんなと違う」と、自分を責めてしまうことがあるかもしれません。
でも、これまでの章を通して見てきたように、不登校だったからこそ得られる強さや視点があります。
「無理」に見えた壁は、ただの通過点かもしれない
今は大きな壁に見えていることも、時間がたつと「あれが転機だった」と思えることがあります。
- 中学の勉強がわからなかった → だから基礎からやり直す力がついた
- 外に出るのが怖かった → だから人の気持ちに寄り添えるようになった
- 勉強に不安があった → だからサポートを上手に使えるようになった
一度つまずいた経験は、決してマイナスではありません。
「過去」よりも、「これからどうしたいか」が大事
どんな経験をしてきたかよりも、今、何を選ぶか・これからどう進むかが、未来を変える力になります。
自分の気持ちに正直になって、「やってみたい」「もう一度頑張ってみたい」と思えたなら、そこが本当のスタートです。
必ず誰かが、あなたの努力を見てくれる
不登校や通信制高校という背景を持っていても、それを理解し、応援してくれる大学や大人、仲間は確実に存在します。
たとえば:
- 入試で一人ひとりの経験や個性を見てくれる大学
- 一歩ずつを大事にしてくれる塾や先生
- 同じような経験をした先輩たちの存在
あなたの歩んできた道を、価値あるものとして受け止めてくれる人は必ずいます。
「やってみたい」が出発点
「自分には無理」と思ったとしても、「それでも、やってみたい」と感じる瞬間があるなら、
それは確かな一歩目です。
可能性は、誰にでも開かれています。
自分のペースで、自分の形で、あなたらしい進路を描いていきましょう。
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