
発達障害の学生を支援する大学の取り組みと特別制度
発達障害のある学生が、大学で学ぶ時代へ
「大学って、発達障害のある自分には難しそう…」
「講義についていけなかったらどうしよう…」
そんな不安を感じている方、いらっしゃいませんか?
でも、どうか安心してください。
今、全国の大学で、発達障害のある学生が安心して学べる環境づくりが少しずつ進んでいます。
◆ 発達障害=大学は無理、じゃない
昔は、「大学=自立できる人が行く場所」というイメージがありました。
けれど今は、「困りごとがある人にも配慮すること」が当然の時代になりつつあります。
特に、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)などを持つ学生が、
- 授業に集中できない
- 人との距離感がうまく取れない
- 時間管理や提出物に苦手がある
といった課題を感じたときでも、サポート体制がある大学なら無理なく対応してもらえるようになってきました。
◆ 「診断がある人」だけじゃなく、グレーゾーンの人も対象になることも
支援の対象になるのは、必ずしも医師の診断を受けている人だけではありません。
「グレーゾーン」と呼ばれる、明確な診断はないけれど生きづらさを感じている学生や、
- 対人不安が強い
- 集団行動が苦手
- 注意がそれやすくて自己管理が難しい
といった特性のある学生にも、相談・支援の扉は開かれています。
◆ 支援がある=「甘えている」わけではない
時に、「特別扱いされている」と感じてしまったり、支援を受けることにためらいを感じる人もいます。
でも、支援とは、「公平に学ぶための土台を整えること」です。
- 眼鏡をかけて黒板を見る
- 車いす用のスロープを使う
- 音読が苦手な子に教材を録音で渡す
こうした支援と同じように、発達特性を持つ学生への配慮も“学ぶ権利”を守るためのものなのです。
「自分らしく学ぶ」ために――
発達障害があるからといって、大学進学をあきらめる必要はありません。
むしろ、あなたに合った学び方ができる場所を選ぶことで、能力を発揮できるチャンスが広がっています。
このあと、実際に大学が取り組んでいる支援制度や、発達障害に理解のある大学の実例をご紹介していきます。
「自分にも行けるかも」と思える大学が、きっと見つかるはずです。
発達障害学生を支える大学の主な取り組みとは?
大学での学びは、講義・課題・人間関係・時間管理など、多くの力を同時に求められる環境です。
発達障害のある学生にとっては、こうした“複数のことを同時にこなす”という部分が特に負担になりやすいものです。
しかし現在、多くの大学が発達障害のある学生をサポートする体制を整えつつあります。
ここでは、その具体的な取り組みをご紹介します。
◆ 「障害学生支援室」や「学生サポートセンター」の設置
多くの大学では、「障害学生支援室」「アクセシビリティセンター」「学生支援オフィス」などの名称で、発達障害を含む障害のある学生の支援専門部署を設けています。
この窓口では、
- 困っていることの相談
- 学習・生活上の配慮申請
- 教員との調整・橋渡し
などを行っており、入学後だけでなく入学前の段階から相談を受け付けている大学もあります。
◆ 主な支援内容
▷ ノートテイク(講義内容の筆記補助)
ADHDやLDなど、講義中にノートを取るのが難しい学生のために、別の学生が代わりに講義内容を記録して共有してくれる制度があります。録音や文字起こしを利用する大学も増えています。
▷ 試験時の配慮
- 制限時間の延長
- 別室での受験
- 問題文のフォント変更(読みやすい書体)
など、**個々の特性に応じた「合理的配慮」**が提供されます。
▷ レポート・課題提出におけるサポート
- 提出期限の延長
- 口頭での説明機会
- 書き方や構成のアドバイス
などを受けられる場合もあります。
▷ 履修・時間割のサポート
時間管理が苦手な学生には、履修計画の作成支援やシラバスの読み方指導を行っている大学もあります。
▷ メンタル面・対人関係への配慮
ASDの学生などに対して、グループワークでの役割調整や、カウンセラーとの定期的な面談、ピアサポーター(先輩学生)との交流支援なども導入されています。
◆ 「診断書」が必要なケースも
支援を受けるには、多くの大学で医師の診断書や意見書の提出が求められます。
これは、「正式な配慮を講義や試験で受けるには、医学的根拠が必要」という制度的背景があるためです。
ただし、相談だけであれば診断がなくても可能な大学も多く、まずは気軽に問い合わせることが推奨されています。
◆ 支援を受けることに“遠慮”しなくていい
「配慮を受けたら甘えてると思われないかな…」
「他の学生に知られるのが怖い…」
そんな不安を抱える方も多いですが、大学側は支援情報をプライバシーに配慮して厳重に管理しています。
サポートはあくまで「公平に学ぶためのツール」。遠慮する必要はまったくありません。
発達障害があっても、適切な支援があれば大学生活は十分に乗り切れるということが、少しでも伝わったでしょうか?
次章では、実際にこうした支援が充実している大学を紹介していきます。
発達障害のある学生にやさしい大学【事例紹介】
「支援がある大学って、具体的にどこ?」
「どんなサポートをしてくれるの?」
そんな疑問にお応えするために、ここでは発達障害のある学生への支援に積極的な大学の事例をご紹介します。
「支援室があるだけ」ではなく、実際に機能している・成果を上げている大学を中心に選びました。
■ 筑波大学(茨城県)
障害学生支援の先進大学。全国から相談者多数。
- 「障害学生支援室」が学内に設置されており、ASD・ADHDなどの学生に対してきめ細かい支援を実施
- 講義資料の配布やノートテイク、試験での配慮だけでなく、履修登録・学生生活全般のコーディネートも対応
- 教職員向けにも定期的な研修を行い、「教える側」の理解も促進
- 入学前の段階からの相談も可能
発達障害の学生が「特別扱いされている」のではなく、自然にキャンパスの一員として過ごせる雰囲気が魅力
■ 立命館大学(京都・滋賀・大阪)
私立大学で屈指の支援体制と専門人材が充実
- 「学生オフィス」「障害学生支援室」がキャンパスごとに設置されており、定期面談・履修支援・メンタルサポートなどが受けられる
- 発達障害に特化したガイダンスや学生向けワークショップなども実施
- ピアサポーター制度(先輩学生が支援)もあり、相談のハードルが低い
事務スタッフや教員も支援研修を受けており、大学全体が「発達障害学生を支えること」に前向き
■ 昭和女子大学(東京都)
女子学生の特性に合わせた、きめ細やかな支援が特長
- 発達障害(特にASD傾向)の女子学生が抱えやすい“感覚過敏”や“場の空気の読みづらさ”に配慮した支援体制
- 少人数制での授業・サポート体制により、先生との距離が近く、相談しやすい雰囲気
- 卒業後の就労支援(インターンやキャリア面談)も実施
「小さな変化にも気づいてくれる」大学として、発達障害の学生から評価が高い
■ 放送大学(全国)
自宅学習メイン、オンライン中心で「人に会わなくても学べる」自由な学び
- 通信制大学として、全国どこからでも受講が可能
- 発達障害に限らず、対人不安や感覚過敏がある学生に人気
- 自分のペースで映像教材を視聴し、レポートや試験も在宅で対応可能(一部科目を除く)
- 特定の支援室はないが、柔軟なカリキュラムが特性にマッチする
「教室に通うのが難しい」「自分だけのリズムで学びたい」人にぴったり
■ 神戸大学(兵庫県)
国立大学の中でも“ソーシャルスキルトレーニング”など先進的な取り組み
- 学内に「障がい学生支援室」あり。ASDの学生にはコミュニケーション支援も実施
- 支援コーディネーターが個別にサポートし、大学生活全体のマネジメントをサポート
- 定期的に「発達障害×大学生活」をテーマにした勉強会も実施
「相談しづらい」学生にも対応できるよう、メール・チャット形式での事前相談も導入
大学ごとに“カラー”が違うのがポイント!
発達障害支援といっても、大学ごとに支援の内容や体制はさまざまです。
- 大規模な大学で専門スタッフが多いタイプ
- 小規模大学での“顔が見える”あたたかい支援
- オンライン・在宅中心の柔軟なスタイル
どれが正解というわけではありません。あなたの特性に合う大学を選ぶことが何より大切です。
大学選びで注目したいチェックポイント
発達障害がある人にとって、大学選びは「偏差値」や「ネームバリュー」だけで判断すべきではありません。
自分が安心して学び続けられる環境があるかどうか――それが、何よりも大切です。
ここでは、大学選びの際にチェックしておきたいポイントを具体的にご紹介します。
◆ チェック①:障害学生支援室などの「支援窓口」があるか
まず最も大事なのは、発達障害を含む学生をサポートする専用の窓口があるかです。
- 大学のホームページに「障害学生支援室」「アクセシビリティ支援センター」などの記載があるか
- どんな支援が受けられるか、具体的に書かれているか
- 入学前から相談できるかどうか
支援窓口があるだけでなく、**実際に機能しているか(更新情報があるか、相談事例が紹介されているか)**も大きな判断材料です。
◆ チェック②:支援の“実績”や“柔軟性”
- 発達障害のある学生の在籍実績や卒業実績はあるか?
- 支援内容が一律ではなく、「個別に調整可能」か?
- 学内に相談できるカウンセラーや臨床心理士がいるか?
特に大切なのは、「あなたの困りごとに合わせて柔軟に対応してくれるかどうか」。
“マニュアル通り”ではなく、“その人に合った形”を模索してくれる大学こそ、本当に信頼できます。
◆ チェック③:講義形式・学び方の選択肢
発達障害の特性により、以下のような要素が大きく影響します:
- 大人数の講義が多い or 少人数のゼミ形式が中心
- 自由選択科目が豊富 or カリキュラムが固定
- オンラインや自宅学習が取り入れられているか
自分が落ち着いて学びやすいスタイルを重視して選びましょう。
たとえば、「対人関係が苦手ならオンライン中心」「集中力が続きにくいなら短時間授業がある大学」など、自分の特性に合った環境を探すことがポイントです。
◆ チェック④:キャンパスの雰囲気・サイズ感
- 人の多さ(都会の大規模大学か、地方の小規模大学か)
- 教職員との距離感(事務手続きや質問がしやすいか)
- 学生の雰囲気(落ち着いているか、自由度が高いか)
“静かに過ごせる大学”“空気がやさしい大学”など、居心地の良さも学びの継続に直結します。
可能であれば、オープンキャンパスや学校見学で実際の空気を感じてみることをおすすめします。
◆ チェック⑤:卒業後のサポート(就職支援)
大学生活だけでなく、その先の進路も不安に感じる方は多いでしょう。
だからこそ、以下の点も忘れずに確認しましょう:
- キャリア支援室での個別面談があるか
- 発達障害のある学生向けの就職セミナー・支援企業との連携があるか
- インターンシップや実習の配慮があるか
発達障害のある学生の「卒業後の居場所」まで見据えたサポートがある大学なら、安心して学びに集中できます。
✅ まとめ:大学選びは“自分軸”で
- 「支援がちゃんとあるか」
- 「先生やスタッフに相談しやすいか」
- 「この大学で、自分らしく過ごせそうか」
これらを大切に、“他人のものさし”ではなく、あなた自身のものさしで大学を選んでください。
特別な制度・配慮を受けるにはどうしたらいい?
発達障害のある学生が大学で支援を受けるには、**「支援が必要であることを伝えること」**が第一歩です。
でも、「どうやって言えばいいの?」「どんな準備がいるの?」と不安に感じる方も多いはず。
この章では、支援を受けるための具体的なステップと、必要な準備についてやさしく解説します。
◆ 合理的配慮ってなに?
「合理的配慮」とは、発達障害を含む障害のある学生が、他の学生と同じように学べるようにするための調整・サポートのことです。
たとえば:
- テストの時間を延長する
- 別室で受験する
- ノートテイク(筆記補助)を利用する
- 教材をデジタルデータで提供してもらう
などが挙げられます。
これは「特別扱い」ではなく、公平な条件で学ぶための当然の権利とされています。
◆ 支援を受けるための一般的な流れ
▷ 1. 支援窓口に相談する
入学後であれば、「障害学生支援室」「学生相談室」などの支援窓口に相談します。
多くの大学では、予約制で個別相談ができます。
入学前の段階(受験前・合格後)でも相談を受け付けている大学もあります。
※オープンキャンパスや個別進学相談会の場で「支援について質問したい」と申し出るとスムーズです。
▷ 2. 支援が必要な理由を伝える(診断書などの書類)
合理的配慮を正式に受けるためには、次のような書類を求められる場合があります:
- 医師による診断書または意見書(発達障害の診断名や特性、必要な支援内容を記載)
- 高校などで受けていた支援内容の記録(合理的配慮の履歴)
- 本人が記入する申請書(困っていること・希望する支援内容)
※診断書の提出が必須ではない大学もありますが、あるとスムーズに進むケースが多いです。
▷ 3. 教職員との調整・配慮内容の確認
支援室スタッフが、学生本人・指導教員・事務スタッフなどと連携し、どの場面で・どのような配慮が必要かをすり合わせます。
その後、必要に応じて教員に通知がいき、講義や試験での配慮が実施される流れになります。
◆ 支援は「受けること」が前提ではない
重要なのは、支援を**「選べる状態にしておく」こと**です。
「今は困っていないけど、これから不安があるかもしれない」
「最初は大丈夫でも、あとでしんどくなったらどうしよう」
そんな人こそ、あらかじめ支援室に登録・相談しておくのがおすすめです。
いざというときに、すぐにサポートを受けられる安心感があるだけで、大学生活の不安はぐっと減ります。
◆ 支援を受けることは「あなたの努力を助ける道具」
支援を申し出ることを「逃げ」や「ズル」と感じる必要はありません。
むしろ、それは**自分に合った学び方を知っている人の“強さ”**です。
大学は、あなたの「学びたい」という意思をサポートする場所。
そのための配慮を受けるのは、立派な“前向きな選択”です。
困難があっても、学び続けられる社会へ
発達障害のある学生が大学で学ぶことは、
ほんの数年前までは「例外的」なことのように扱われていました。
けれど今は――
それが“あたりまえ”になりつつある社会へと、確実に変わってきています。
◆ 「できない」ではなく、「できる方法を探す」時代へ
以前は、「障害があるから無理」「特性があるから難しい」と言われていたことが、今ではこう変わっています。
「じゃあ、どうすればできるか、一緒に考えましょう」
この考え方が、多くの大学、先生、職員、そして社会全体に広がりつつあります。
支援を受けながら大学生活を送り、卒業し、社会で活躍している発達障害のある方たちは年々増えています。
◆ あなたの学ぶ権利は、しっかり守られています
発達障害があっても、大学に通ってもいい。
配慮を受けながら学んでもいい。
困ったときに「助けて」と言っても、何もおかしくない。
あなたの「学びたい」「成長したい」という気持ちは、しっかりと尊重されるべきものです。
日本では、障害者差別解消法や合理的配慮の義務化により、大学や教育機関にも支援体制の整備が求められています。
だからこそ、**あなたがその支援を利用することは“権利の行使”**であり、決して遠慮するものではありません。
◆ 今のあなたのままで、学び続けられる未来がある
完璧でなくていい。
すぐに答えが出なくてもいい。
まわりと同じスピードじゃなくていい。
あなたの学びには、あなたのペースがあります。
支援があることで、それが実現しやすくなります。
だからどうか、
「発達障害があるから、大学は無理だ」と決めつけずに、
「行ける大学はどこだろう?」「自分に合う環境は?」と視点を変えてみてください。
◆ 最後に:あなたの選んだ道が、次の誰かの希望になる
あなたが大学で学び、
自分に合った支援を受けながら歩み続ける姿は、
きっと未来の誰かを勇気づけます。
「私も、あの人みたいにできるかも」
「発達障害があっても、未来はあるんだ」
そう思える社会を、一緒につくっていきましょう。
あなたには、学ぶ力がある。
そして、学ぶ権利も、居場所も、ちゃんと用意されています。
未来を信じて、できる一歩から始めてみてください。
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